『トライアスロンレースが終了した後の疲労(レースダメージ)は、選手のレベルによって違う』ということを定量的に理解しました。今回はその理解を説明することにします。
みなさんはこの「ダメージの違い」を簡単にイメージすることができるでしょうか。
ここでのレースダメージとは、1レースで生じた獲得TSSとし、身体のどこかを部分的に怪我するという意味ではありません。
参考
レースタイムの速い人は翌日すぐにトレーニングを行なったり、もしくはリカバリー強度で身体を動かすこと(アクティブレスト)ができます。
しかし、レースタイムの遅い人は、身体がバキバキになっていることが多く、完全休養した方がアクティブレストよりも好ましい場合が多いです。
なぜこのような違いが出るのかなと考えてみたところ、思ったより簡単に答えは見つかりました。
その答えとは、定性的には、速い選手と遅い選手ではLTペースが当然異なりますが、レース距離は同じだからです。
ですから「レース時間」に違いが生じ、その結果TSSが異なり、疲労度合いが変わるということです。
TSSと回復日数具合について
TSSが150未満 – 低(回復は概ね翌日までに完了)
150-300 – 中程度(翌日には疲労が残っているかもしれないが、2日目には疲れがとれる)
300-450 – 高(2日後でも若干の残留疲労が存在する可能性がある)
450以上 – 非常に高い(数日続く可能性がある残留疲労)
そこで、どの程度の違いなのか定量的に確認してみることにしました。
前提です。
・サンプルカテゴリーはプロ、エリート、中間層のTOP側、中間層のボトム側、ビギナーに分類
・ショートディスタンスとし、強度は種目にかかわらず0.95
・バイクは171Wで30km/hの速度を基準として、速度変化はパワー比のルート倍と仮定(空気抵抗、すなわち要求パワーは速度の2乗で効くため)
計算結果をテーブルにまとめます。
ゴールタイムはプロ1:56,エリート2:08、M-TOP2:30、M-BOT2:53、ビギナー3:11くらいになります。(単位に注意)
このとき、エリートのTSSは203となり、これを基準にすると、各カテゴリーとのTSSの違いは
プロ : -9%(TSS184)
M-TOP : +17%(TSS238)
M-BOT : +36%(TSS275)
Beginner : +49%(TSS302)
となります。
つまり、相対強度(IF=0.95)が同じでも、エリートのような速い人と初心者のダメージを比較すると1.5倍も違うのです。
また、この指標からすると、TSSが200程度であれば翌日も動けると思いますが、TSS250を越えてくるときついこともわかりますね。
TSSと回復日数具合について
TSSが150未満 – 低(回復は概ね翌日までに完了)
150-300 – 中程度(翌日には疲労が残っているかもしれないが、2日目には疲れがとれる)
300-450 – 高(2日後でも若干の残留疲労が存在する可能性がある)
450以上 – 非常に高い(数日続く可能性がある残留疲労)
蛇足的ではありますがロードバイクにおける3時間耐久レースなどは、どの選手カテゴリーでも、相対強度が同じ場合には同じ疲労度になります。能力の差は、走行距離に反映されることになりますね。
「中間層のTOP」のカテゴリー選手がレース強度を変えた場合
今度は、あるカテゴリーの選手がレース強度を変えてレースに臨んだ場合を考えてみます。
結果はこのようになります。
レース強度が上がると、レース時間は短くなりますが、強度上昇効果の方が強くTSSは高くなりますね。
レース強度(IF)が0.05変わるだけでも負荷は大きく変わります。
ですので、レースタイムを短縮するには、いかに高い強度で動けるようになるかを目指すよりも、いかにLTペース(FTP)を上げられるかを目指したほうがよいのでしょう。
そのために高強度のトレーニングが必要なのです。レース距離が長い場合は特にそうだと思います。